広告は「感動 or Not」
Dec
13

3ヶ月ほど前の話になりますが、BrandXingの原社長とメール議論した際、こんなフレーズに行き着きました。
「感動 or Not」
いまや「感動を生む/伝える」以外の広告は意義ゼロと思った方が良い、という考え方です。
なぜなら、広告を取り巻く環境は、厳しくなっています。
- AISAS時代と言われるように、販促手法の多様化と氾濫で、広告は”即時忘却”が宿命となった
- 相次ぐ食品偽装問題などで、ブランドが主張する世界観が信頼されにくくなった
- 「ネットで裏トリ」が大型商品の購買パターンとして一般化した
- MD競争や店頭での科学的商品入れ替えの浸透で、そしてネットでのロングテール・チャネル活性化で、販促力や棚の支配力より商品力そのものへの売れ行き依存度が高まった
そのため、「広告情報」の社会的価値は下がってしまいました。「この広告メッセージや販促手法で、本当に売上に費用対効果あるのか?」と善良なる広告マンが悩む局面も増えました。華やかだった広告業界が、衰退産業の仲間入りか?という危惧さえ覚えます。
一方で、世がますます求めている情報に、「感動情報」があります。今はドライでせちがらい世の中でなく、むしろ「一億・総感動したがり時代」じゃないかと思うのです。
元来は個人の心の内にとどまっていた感動が、ブログや掲示板にアウトプットされ、あっという間に「そうだ、そうだ」と共鳴・増殖・伝播していきます。テレビでも、昔は感情を露わにすることを禁じられていたアナウンサーの涙をカメラがズームアップし、中年男性タレントもすぐにもらい泣きをし、スポーツ中継は勝敗や記録より感動をテーマに編集されます。
かくいう僕自身も、仕事でコピー作成する際、「商品特徴」訴求より「その商品に関連する感動できごと」を表現する方が、しっくりきます。”モノより思い出”路線。一人の生活者としても、感動している最中の自分に心地よさを覚えるし、感動したがっている自分を見つけることがあります。
そこで、こんなふうに、仮説してみました。
- 広告の価値」は、その商品の「売上増加率」で測る
- モノ飽和社会での「売上増加率」は、その商品に関する「感動情報流通量」に比例する
- つまり、「感動情報量に直結する広告」のみが価値がある (それ以上orそれ以下のことを狙った広告は、ペイしない)
- よって、これからの広告は、感動を「生む」「伝える」どちらかに専念すべき
この仮説に従うと、感動を「生む」「伝える」費用対効果を最大にする設計が、今後の広告・販促フレームワークの最適解となります。
たとえば、「お酢メーカー」の場合。お酢をテーマにWEB閲覧動機を作るのは難しいので、「ネット」接触単価は高くつく。「TV」はネットより見かけの接触単価は安いけれど、「15秒映像で感動を新たに生む」材料、たとえば革新的容器で使いやすい!がない場合は、これも実質単価は高くつく。むしろ生活必需品の場合に接触単価が一番安くなるのは「店頭」や「商品そのもの」。ならば、「棚」を起点にしたフレーム設計をするのが、感動情報流通の費用対効果が最大化します。(「広報」も接触単価が安い手法ですけど)
第1段階の感動発火、感動喚起を「棚」で行った後、第2段階の感動増幅は「ネット」の出番です。感動を収集・蓄積したり、精錬する(ランキングなど)単価が一番安いからです。そして第3段階で精錬した感動(=外しがないネタ)を、スピーディに広く伝達する手段としては、もちろん「TV」が一番安い。
つまり「棚」→「ネット」→「TV」という流れです。従来のフレームワークは「TV」が一番最初でしたが、お酢メーカーの感動情報流通効率が最大化する設計は、「TV」が一番最後になるのです。こうしたフレームワークが実機能するには、従来とは異なるクリエイティブが求められますし、「棚」→「ネット」効率を上げる機能(おそらく携帯)の進化が必要ですし、流通営業現場でのTV信仰打破も前提となります。よって現時点では、机上フレームでしかないかもしれません。
しかしながら最近、「感動 or Not」論に関して、一つ自信を持ったことがあります。それは、QLife(キューライフ)。
QLifeには、日々たくさんの病院口コミが集まります。口コミ投稿の経済的インセンティブは「ポイント」だけ。金額換算20円。それなのに、1000文字に達するものや、読んでいてジーンとくる内容も、珍しくありません。おそらく書くのに、相当の精神的エネルギーと、30分以上の時間を要したはずです。「この文章を、お世話になった、あの先生が読むかもしれない」などと慎重になって、1時間以上かかった方もいるはずです。わずか20円対価で。
そう、投稿者は、経済的対価で口コミを寄せるわけではないのです。そこに感動があったからなのです。先生に、ナースに、その治療行為や成果に、ものすごく感動をしたから、あるいは感動をしたにもかかわらずその伝達口がなかったから、これだけ一生懸命に体験談を寄せて下さるのです。
QLifeは創業以来、良質な口コミを集めることに専心していました。わざわざ「批判」口コミを排除し、ポジティブな口コミだけをマジメに集めていました。そして気づいてみたら、集まっていた正体は「感動」だったのです。
これを前述の、感動情報量の費用対効果、という観点から見ると、「もともと医療には感動が多い。だから感動を顕在化し流通させるのが、最も低コストで可能な分野だった」といえます。
妊婦たらい回しや医療過誤、医師過労、医療費財政難・負担増など、今の医療分野はツラく苦しい話題が多すぎます。でも本当は、明るく感動的なことも、診療現場ではたくさん起きているのです。僕達は、医療に関する感動情報流通量を、もっと増やしていきたい。そう強く思っているし、その手ごたえを感じています。実は上述の「棚」発想にも、もうすぐチャレンジします。
QLifeのサイト理念は「感動をシェアしよう!」です。これを、今後も大事にしていきます。
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